バーサス西日暮里からの宿題、読書感想文
運命なんて大げさな言葉は使いたくないけれど
と◯ちゅうさんのサイン本が店長の手元に収まって、バーサスの看板の1枚になったように
この本は私の手元に収まることになっていたような気がします
アンドレ・ジッド(山内義雄/訳)の「狭き門」と吉村昭の「冬の鷹」を読了しました
まず先に読み始めたのは「狭き門」、純文学、ましてや外国文学なんてほとんど嗜まない私ですが、QMAなんかやってたりすると、少しはかじってみるべきかと、シェイクスピアだのドストエフスキーだのバーネットあたりの有名外国文学に挑んでみたことはあります
しかし、やはり翻訳文学はとっつきづらくて思うようにはいかず、成果はあがりませんでした
そしてこの「狭き門」、冒頭から「思い出せる事実だけを完結に書くので、話がとぎれとぎれだったりしても分かりやすく綴りあわせるようなことはしないので、あしからず」と不穏な前置きから始まるのです
このいきなりの先制パンチに、カトリックキリシタンの知識に乏しいことも重なって、読み進めては理解できずに立ち戻りを繰り返して栞は進まず、読了するまでにすごく時間を要しました
「狭き門」は主人公のジェロームが敬虔で禁欲的な従姉のアリサに憧れ、自らもまた神の試練を信じて研鑽してアリサにふさわしい男たらんと邁進するが、遂にはアリサが自害して愛が成就しなかった事が淡々と描かれた後、アリサが遺した日記によりアリサもジェロームを愛しながら敬虔で禁欲的であるがゆえに、愛欲に溺れる自分自身に迷い苦悩し続けた末に、自らの命を絶つまでの経緯が語られるという話
世俗的で享楽的な従妹ジュリエットが妥協と打算で結婚しながら恵まれた幸せな結末を迎えることで、ジェロームとアリサの非業な結末はより浮き彫りになり、強い印象を与えるものになっています
そんな2人故か、直接顔を合わせたり会話したりするシーンはそれほど多くはありません、事実を語る証拠として2人が交わした「手紙」が多く登場するのです、つまりは「ラブレター」…「恋文」って、あれ?
夢の宮 〜遙けき恋文〜 (夢の宮シリーズ) (コバルト文庫)
- 作者: 今野緒雪,江ノ本瞳
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/09/30
- メディア: 文庫
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私が持っていった「夢の宮~遥けき恋文」はタイトルそのまんまで「恋文」のやりとりで話が展開する"極めてぬるくかるーい"話です、それが"ものすごーく厳しく重たい"「狭き門」として手元に返ってきたというのは、偶然にしちゃ出来過ぎてると思うのは私だけでしょうか?
続いて読み始めたのが「冬の鷹」、本を提供してくれたプレイヤーさんからも直におすすめの作品だと念を押されていたので、楽しみに後に取っておいたのですよ
「冬の鷹」は前野良沢がオランダ書の横文字に触れオランダ語の習得を志し、杉田玄白らとターヘル・アナトミア(解体新書)の翻訳という壮挙を経て、なお語学研究に生涯を捧げる姿を描いた歴史小説
医家として医術の発展を急ぎ解体新書を世に送り出し名声と地位をほしいままにする杉田玄白と、不完全な翻訳を潔しとせず訳業の中核を担いながら解体新書へ著名せず辺境の蘭学者で終わる前野良沢の2人の生き様が描かれています
要領が悪く偏屈で人付き合いも苦手な前野良沢なんだけど、そこは主人公、学究の徒として高みを目指す姿が格好良く描かれていて、非業の最期のようでありながら幸せそうだったり、読後感も清々しかったです
こちらは読み始めたら止まりませんでしたわ、ええ、推し文学交換会から今日までほとんど「狭き門」の方に時間を取られていたと言っても過言ではありません
本を提供してくれたプレイヤーさんがどうしてこの2冊を組み合わせたのかは聞いていないのでわかりません
どちらも主人公が多くを望まぬ孤高の求道者であり、そんな人物を描いた話が好きだったから、とも理解できます
しかし、勘違いかもしれませんが、極めて読みづらい翻訳外国文学である「狭き門」と、外国語を翻訳することの厳しさ難しさを描く「冬の鷹」の組み合わせに、意味があったような気がしてなりません
やれやれ、ようやく宿題が終わりました、別に提出期限があったわけではないけれど、学生時代を思い出しました
あらためて「美文限闘杯」ならび「推し文学作品交換会」に参加させていただき楽しませてもらったこと、関係各位の皆々様に御礼申し上げます